拘置所刑務所の医療被害と悪弊

刑務所・拘置所の医療はひどいものです。診察をしない、薬を出さない、診察しても治療をしない。熱中症で死ぬ者、凍死する者、精神病の薬を止められたために自殺した者、治療を放置されガンが進行した者など、何人もの犠牲者が出ています。刑務所は、裁判で負けても、反省せず、医療を改善しようとしません。 闇に葬られたり、泣き寝入りした犠牲者も数知れず。

国家賠償訴訟

国家賠償訴訟

刑務所で、理不尽な取り扱いをされたり、医療を受けられず病状が悪化して、苦痛を受けた場合、刑務所の不当性を認めさせるために、国家賠償訴訟という方法があります。
平成19年中に国の敗訴が確定した裁判は18件、そのうち刑務所・拘置所関連が13件、検察関連が2件あります。


・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(二万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(三万円)
・ 刑務所職員が弁護士の接見を妨害したとするもの(十五万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(二十万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(四十四万円)
・ 刑務所職員の受刑者に対する医療行為に過誤があったとするもの(七十万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(三千円)
・ 刑務所職員が受刑者の所持品を紛失したとするもの(五十五万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(四万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(五万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(五万円)
・ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(一万円)
・ 拘置所職員が弁護士の接見を違法に拒否したとするもの(百十万円)
・ 検察事務官が被害者の被害感情等について虚偽の電話聴取書を作成したもの(五万円)
・ 検察官の公訴提起が違法であったとするもの(百九十六万千三十九円)

死亡だと数千万円、後遺症が残れば数百万円の賠償額になることもあるのですが、刑務所の処分を争う場合は、それほど高額にはならないようです。
賠償額3千円というのがありますが、訴訟費用は賄えないでしょう。
それでも裁判にするのは、賠償額よりも、刑務所に責任を認めさせたいという憤りなんだと思います。

裁判で刑務所の責任を認めないケースも多いので、訴訟の数はもっと多いはずです。
皆さん泣き寝入りするかと思ってたんですが、意外に頑張っているようです。




自殺を防げない刑務所を容認する不当判決/遺族の無念

福岡刑務所が自殺を防ぐ注意義務を怠ったとして、国に賠償を命じた福岡地裁判決を取り消した福岡高裁の判決。

自殺までの経過
2013年
1月 福岡刑務所に収監。
4月 自殺を図る。これに刑務所は懲罰を科す。
5月 自殺前日、母親の面会で「死にたいと」言っていた。
自殺当日、面談した職員が幻覚、抑うつ症状確認する。
男性は医師に鬱症状を訴えたため、監視カメラ付きの独居房に移したが、2時間後、タオルとパジャマのズボンをつなげて首をつって自殺既遂。

刑務所が、自殺未遂を懲罰にするのには、あきれるというか、怒りを覚えます。
(#`Å´#)プンプン

地裁判決と高裁判決の違いを見てみる

認識について、
地裁:自殺の前日に面会した母親に「死にたい」と漏らし、当日も職員に幻覚や重い抑うつ症状を訴えていた。 職員らは、男性の精神状態が急激に悪化していることを認識していた。
高裁:男性の一言だけで職員が自殺願望に思い至るのは困難だ。 すぐに自傷行為に及ぶ危険性はないと認識したのはやむを得ない。


自殺の予見可能性について
地裁:男性がうつ病で自殺未遂をしていたことなどから「遅くとも自殺3時間前に刑務所職員が面接した際には自殺の予見可能性があった
高裁:自殺当日の生活や動作の面で特異な様子はなく、自殺に及ぶ危険性を予見するのは困難だった。「自殺の衝動が高まっていると医師が判断していたものの、自殺の危険性を具体的に見てとるのは困難だった。

監視カメラ
地裁:男性が自殺しようと5回にわたり計9分以上、不自然な体勢をとっていたのに、見落とした過失があったと認定。「職員が監視カメラのモニターを観察していれば、容易に異変に気づくことができた。
高裁:監視カメラの映像も重要な部分は捉えられず、自殺の状況はモニター画面の端に小さく映っているだけ。


注意義務
地裁:タオルの使用禁止、監視強化などの自殺を防ぐ注意義務を怠たった。刑務所は自殺の危険性を認識していた、自殺は予見できたのに対策を怠った。監視が不十分。
高裁:自殺が予見できないので注意義務違反無し。


大工強判決への疑問と批判

カメラ付き独居房に移したのは自殺防止が目的ですから、刑務所は自殺の恐れがあると認識しています。
刑務所は、自殺リスクを、「直ぐには自殺しない」と評価したが、実際は、直ぐに自殺しているので、自殺リスクの評価を誤っています。
高裁は、自殺のリスク評価を誤ったのはやむを得ないとし、注意義務違反はないと判決しています。

(1) 自殺が直ぐか直ぐではないかの評価は可能なのか?
高裁判決は、生活や動作面での特異な様子や自殺願望の有無から、自殺の時期を直ぐと評価出来ることを前提にしています。
自殺の時期が予見可能という前提には立証が無く、直ちに自殺する恐れがないと積極的に否定する根拠に欠けます。


(2) 単なる自殺の危険性と直ちに自殺する危険性で、注意義務の有無や程度が変わるのか?
刑務所は、自殺のリスクを"直ぐではない"と評価しましたが、自殺の恐れがないと評価しているわけではありません。 直ぐでなくても、自殺の恐れがあるなら、自殺を防ぐ注意義務を負うはずです。 高裁判決は、自殺は直ぐでないから、注意義務も無いと短絡的に判断をしています。
直ぐに自殺はしないという予断によって、自殺防止措置は疎かになります。 どんな場合でも、自殺予防は最悪を想定してあたるべきです。


(3) 自殺リスクの評価を誤ったのはやむを得ないのか?
a.自殺願望に思い至らなかった
・ 一カ月前に自殺未遂があり、衝動性が高まっていれば、それだけで自殺のリスクが高いと評価できます。
・通常、面会には刑務官が立ち会います。刑務官が「死にたい」との言動を聞いているはずですし、会話をメモしているので、記録が残っている可能性があります。
・自殺前日、面会した母に「死にたい」と言ってました。 死にたい気持ちが止められない、助けてほしいという痛切な思いが込められています。 母は何もしてやれません。 自殺を防げるのは刑務所だけです。 でも、1カ月前の自殺未遂では懲罰になり、うつに懲罰の苦しみが加えられました。 自殺願望を申告したところで、自殺未遂を懲罰にする刑務所に、助けは期待できないと考えて、 面接で自殺願望を述べなかったのではと思われます。
・1カ月前に自殺未遂があったので、それ以前から自殺願望が続いていたと思われます。 抗うつ薬や抗不安薬で自殺願望が消えることはありますが、刑務所は薬を出そうとしないので、投薬治療はされていないでしょう。
1カ月以上も自殺願望に思い至らなかったというのは、刑事施設の収容に関する法律違反ではないでしょうか。
第五十六条  刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。

・自殺願望で直ぐに自殺の危険があると判断できるならば、面接で聞くべきでした。それをしなかったのは過失と言えるでしょう。
 
b.自殺当日、特異な様子から、自殺に及ぶ危険性を予見するのは困難だった。 自殺の危険性を具体的に見てとるのは困難だった。
・ 特異な様子が具体的に何を指すのか不明ですが、「自殺予防 刑務官のための手引き」(WHO作成、横浜市大医学部訳)に自殺の予兆として、以下のことが書かれています。

1)自殺念慮
2)泣いたり、不眠、動作の緩慢、極端に落ち着きが無い、往ったり来たり歩き回るといった精神の不調
3)気分や食習慣、あるいは睡眠の突然の変化
4)個人の所持品を譲り渡してしまう
5)活動に対する興味や人間関係についての興味の消失
6)服薬の拒否や、服用している薬の増量の要求

これらの予兆が、自殺当日に必ず現れるわけではありません。
自殺の予兆を具体的に捉えるには、ある程度の期間観察する必要があります。
刑務所は、自殺当日の数時間の観察から、自殺の危険性を評価しています。
わずか数時間の観察から自殺のリスクを評価しても、根拠・信頼性に欠けます。
当てにならない評価を下したのは刑務所の過失です。
 
c. 自殺の衝動が高まっていると医師が判断していたものの

・刑務所の医師が衝動性が高いと診断したのには理由が有るはずです。 医師は、自殺の予兆を把握していたと思われます。
刑務所の医師は、自殺のリスクが高いとみていたはずです。
この点で、高裁判決は、医師の判断を軽視しています。

(4)自殺を防ぐための注意義務違反が疑われる措置
a. タオルを引き上げなかった
・ 東京拘置所では、自殺未遂は即タオルを引き上げとなり、自殺の恐れが無くなるまで使用させません。他の刑務所も同じ対応をしているはずです。
・ 自殺未遂後から継続してタオルを使用させていたら、注意義務違反は自殺未遂後から生じていたことになります。
・ 福岡刑務所でも、通常は、自殺防止で独居房に入れる際にタオルを引き上げていたのではないかと思われます。このケースだけ通常の措置を取らなかったとすれば、単純なミスになるでしょう。
・ 懲罰後に自殺の危険性が無くなったと判断して、再びタオル使用させていた場合は、その判断が医師によるものなのか、判断に過失がないかが問題となります。自殺未遂から1カ月程度で自殺の危険がなくなるのは、考え難いことです。

 
b. モニター監視で自殺に気づかず
昼夜間独居では、部屋の中を歩き回ることは禁止され、部屋の中央に終日座っていることになっているはずです。
部屋の中をうろうろしているのをモニターで視認したら、刑務官が注意しに部屋に行くはずです。それをしていないのは不自然です。
モニターを見ていなかった可能性を感じます。
部屋に注意に行けば、自殺は防げたはずで、それをしなかったのは注意義務違反だろう。


監視カメラ付きの部屋に移して3時間後に自殺しています。
刑務所が、こんなに早く自殺してしまうと思わなかったのはその通りでしょう。
でも、そこに油断が有ります。

自殺前の心の変化と体調の変化は、ある程度の時間をかけて増悪します。 絶望感と自殺願望に囚われるようになれば、きっかけ次第でいつでも自殺行動に出る危険性があります。 
1カ月前の自殺未遂、幻覚抑うつ症状、死にたいとの言動、衝動性が高まっているとの医師の見立てを総合的に考慮すれば、普通の人でも、自殺企図の危険性があると判断すると思います。 自殺の可能性があったら、すぐかどうかに関わらず、対策を取るべきではないかと思います。


大工強裁判長は「自殺の衝動が高まっていると医師が判断していたものの、自殺の危険性を具体的に見てとるのは困難だった。
監視カメラの映像も重要な部分は捉えられず、自殺の状況はモニター画面の端に小さく映っているだけで、職員の巡回にも不適切な点があったとは言えない」として1審とは逆に原告の訴えを退けました。byNHK


一審判決は、
 男性が自殺前日に面会した母親に「死にたい」と漏らしたり、職員に幻覚や重い抑うつ症状を訴えたりしていたとし、「職員らは精神状態が悪化していることを認識していた」と判断した。by朝日

 「当日の職員との面談で、男性に幻覚や抑鬱(よくうつ)症状がみられた。自殺の危険性は相当高まっていた」と指摘。「監視カメラ付きの独居房にいた男性が自殺を図る体勢を繰り返していたのに、職員は漫然と見落とした」と判断した。その上で、自殺に使う危険のあるタオルの使用を制限したり、監視を強固にしたりするなどの対策を怠ったとした。by産経

  母親側は「監視や物品制限など自殺を防止するための刑務所の措置は不十分。自殺未遂後には独居房に入れるという懲罰を科し心理的に危険な状態に追い込むなど、安全配慮義務にも違反している」と訴えている。by日経

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