精神病の治療薬を服用していた人が拘置所や刑務所に入ると、薬はどうなるのだろう。
同じ薬を出してもらえるのだろうか?

刑務所、拘置所、留置所に収容する前には健康診断を実施することが法律で決められている。

留置場(警察)の場合は、一般の病院に連れていって診察を受けさせ、そこで診断した医者が処方箋を書いて薬を出す。
留置場の場合は、それまで飲んでいた薬を全部出してくれる。

拘置所・刑務所の場合は、常勤医が所内で入所者を診察して薬を出すか出さないかを決める。
拘置所・刑務所の医者は睡眠薬は出すが、他の精神病治療薬を出そうとしない。

一例を紹介しよう。
中野(仮名)さんは、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬を全部で4種類服用していた
留置場では、従前の薬全部が処方された。
X拘置所では入所時に4種類の薬全部を中止した。
当然離脱症状が出た。
そのため、X拘置所は元の4種類の薬に戻した。
その後東京拘置所に移った。
東京拘置所では、2種類の薬が中止された。
Z刑務所では、さらに抗不安薬だけになった。

睡眠剤と抗不安薬は内科でも良く処方する薬なので、刑務所・拘置所に常備してあると思われる。そのため、比較的簡単に出すらしい。

刑務所、拘置所、留置所での医療をどうするかは、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律で以下のように書かれている。

第五十六条
 刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。


留置場、拘置所、刑務所はいずれも刑事施設で、同じ法律に従っているはずである。 
社会一般の医療水準が、刑務所、拘置所、留置場で違っていいはずがなかろう。

留置場で処方していたた薬を、なんでX拘置所は出せないのか。
X拘置所が処方していた薬を、なんでZ拘置所や刑務所は中止するのか。

留置場は公安委員会、拘置所・刑務所は法務省の管轄だが、管轄が違ったからといって法律の適用が違っていいはずがない。

中野(仮名)さんは、薬を中止されたために、症状が増悪して、薬の処方を求めたが、薬は処方されなかった。

拘置所が従前の服用薬を中止するのは安全確保義務違反の違法行為だとして、国に賠償を命じる判決が平成18年に出されている。

東京高裁平成17年(ネ)第1165号 平成18年11月29日判決

東京地裁平成15年(ワ)第9953号 平成17年1月31日判決

にもかかわらず、刑務所と東京拘置所はどこ吹く風と、この判決を無視して、今も入所者の精神病薬を中止している。
ヽ(`Д´)ノウガー!!
中野(仮名)さんと同じような扱いを受けている人が全国の刑務所・拘置所にたくさんいるのではないかと懸念される。